自然のなかでゆったりと湯浴みを楽しめる「秘湯」。和歌山県内にも秘湯気分を味わえる温泉地が点在しています。アクセスはやや大変かもしれませんが、そのぶん人も少なく、静かで落ち着いた時間を過ごせるのが秘湯の魅力といえるでしょう。
今回は、温泉好きが選ぶ「秘湯感あふれる和歌山の温泉地」を、宿泊できる旅館や周辺の観光スポットに触れつつ紹介します。温泉好きにおすすめしたい有名温泉2つも紹介するので、和歌山旅行の計画にお役立てください。
和歌山の「秘湯」とは?
以下のような特徴をもとに「秘湯」として3つの温泉地を選定し、旅館や観光情報もあわせて紹介していきます。
- アクセスがやや困難(電車・バスのみでは行きにくい)
- 自然に囲まれており、静かに過ごせる
- 周囲に大規模なリゾートやチェーンホテルがない
- 宿泊できる温泉宿・旅館がある
「秘湯」と聞くと、山奥の誰も知らない野湯や、舗装されていない山道を登ってやっとの思いで辿り着くような温泉をイメージする方も多いかもしれません。確かに、“本格的な秘湯”は、知る人ぞ知る温泉を指すことが多いでしょう。ただ、近年では「静かに過ごせる穴場の温泉宿」として“秘湯”に行ってみたいと考える方も増えています。
和歌山には、高野山周辺の山深いエリアや世界遺産・熊野古道の周辺に、観光地化されすぎず、落ち着いた雰囲気を保つ温泉地が点在しています。
和歌山県の秘湯3選・周辺のホテルや旅館も紹介
秘湯周辺は、便利なスーパーやコンビニなどが少ない可能性があり、アクセスするためのバスや電車の本数も限られています。以下の情報を参考にイメージを膨らませ、十分な下調べをしてから訪問しましょう。
1.龍神温泉(高野山近く)
和歌山県の山間部、清らかな日高川の流れに沿って湧き出る龍神温泉。龍神温泉は「日本三美人の湯」として、長い間、多くの人々に愛され続けてきました。アルカリ性単純泉の非常にやわらかな湯質が特徴で、美肌効果が期待できるとして多くの入浴客に親しまれています。
龍神温泉の歴史は古く、その始まりは飛鳥時代後期の8世紀まで遡ります。伝承によれば、龍神温泉を発見したのは、修験道の開祖として知られる役小角(えんのおづの)とのことです。また、弘法大師空海が難陀龍王からの神託を受けて開湯したという言い伝えも残されています。
江戸時代に入ると、紀州徳川家の初代藩主である徳川頼宣がこの温泉を大変気に入り、藩の予算を投じて温泉地の整備と保護に努めました。この時代に建設された「上御殿」と「下御殿」は現在でも営業を続けています。
龍神温泉のホテル・旅館
「龍神温泉 上御殿」は、江戸時代より創業する、伝統的な日本建築の美しさと長い歴史の重みを肌で感じられる宿です。建物は国の有形文化財として認定されており、文化的価値の高さがうかがえます。特に「御成りの間」は、かつての徳川藩主が実際に宿泊した部屋。家具や調度品が、当時のまま保存されています。
露天風呂は貸切のみの完全プライベートです。周囲の自然環境では野生のタヌキや鹿が姿を見せることもあり、山里ならではの素朴な驚きと喜びを味わえるでしょう。
| 施設名 | 龍神温泉 上御殿 |
| 住所 | 〒645-0525 和歌山県田辺市龍神村龍神42 |
| アクセス | JR紀伊田辺駅から龍神バスにて75分 |
| 日帰り入浴 | なし |
2.湯の峰温泉(熊野古道近く)
1800年の長い歴史を持つ湯の峰温泉は、日本最古の温泉として親しまれています。かつて熊野詣での参詣者たちは、神聖な地へ向かう前にこの温泉で湯垢離(ゆごり)という身を清める儀式を行い、長い道のりで疲れた体を癒していました。泉質は関西地方では珍しい硫黄泉で、独特の芳香が漂っています。豊富な炭酸水素イオンにより、肌触りの滑らかなお湯を楽しめます。
ぜひ入っておきたいのが「つぼ湯」と呼ばれる岩造りの天然温泉です。このつぼ湯は熊野古道の参詣道の一部として世界遺産に登録されており、1日に7度も湯の色が変化するという不思議な現象でも知られています。
つぼ湯をご利用の際は、公衆浴場の番台で予約を行い、順番を待って入浴してください。2~3人程度が入れる浴槽が1つのみのため、交代制の貸切スタイルとなっています。源泉の温度は90度を超える高温のため、加水して適温に調整してから入浴しましょう。
なお、周辺の商店で購入した卵や野菜を、温泉の湧き湯で茹でるといった楽しみも味わえます。
湯の峰温泉は、落ち着いた雰囲気に浸りながら、つぼ湯での入浴体験や温泉街の情緒を味わえる場所です。観光客だけでなく地元の方々にも愛され続けている、親しみやすい温泉地といえるでしょう。
湯の峰温泉のホテル・旅館
「湯の峰温泉 湯の峯荘」は、湯の峰温泉街から源泉を引いた、かけ流しの温泉旅館です。新鮮な食材を用いた珍しい温泉料理をはじめ、地域で採れる上質な素材をふんだんに使った料理の数々が宿泊客から高い評価を得ています。
つぼ湯や湯筒、公衆浴場などがある湯の峰温泉の中心街まで徒歩10~15分ほどの便利な場所に位置しています。湯の峰温泉街散策の拠点としても最適な立地といえるでしょう。
| 施設名 | 湯の峰温泉 湯の峯荘 |
| 住所 | 〒647-1734 和歌山県田辺市本宮町下湯川437-0525 |
| アクセス | JR紀伊田辺駅から龍神バスにて約100分 |
| 日帰り入浴 | 12:00~15:00(駐車場に余裕のあるときのみ17:00まで延長) |
3.川湯温泉(熊野古道近く)
湯の峰温泉の近隣に位置する川湯温泉は、その名が示すように、温泉が川となって流れる珍しい光景で知られています。湯だまりから溢れ出た温泉水が川となって温泉街を巡り、辺り一面に立ち上る湯煙と硫黄の香りが温泉地らしい風情を演出しています。泉質はアルカリ性単純温泉です。
絶え間なく湧き出る70度以上の高温源泉に、熊野川水系の大塔川の清流が合流することで、入浴に適した温度の天然温泉が生まれます。河原では周辺の宿泊施設が設置した露天風呂も利用できますが、せっかく訪れたからには、ぜひ自分自身の手で温泉を掘り当てる楽しみも味わいたいところです。近隣の温泉宿に宿泊の際は、温泉掘りに必要なスコップを借りられる場合もあります。
特に冬季(12月から2月頃)は、川の一部を堰き止めて造られる巨大露天風呂「仙人風呂」が開設されます。
川湯温泉のホテル・旅館
「日本秘湯を守る会」のサイトでも取り上げられている「川湯温泉 冨士屋」。河原での温泉掘り体験が可能なのは、当宿の目の前のエリアに限られているとのことです。客室はすべて大塔川に面した配置となっており、川面から立ち上る湯煙という神秘的な風景を客室でくつろぎながら眺められます。
釣り竿と餌を無料で提供してもらえるので、川での釣り体験もできます。釣り上げた魚は調理してもらえるため、夕食の際に味わうことができます。温泉掘りから川遊び、そして自分で釣った魚を味わうまで、ここならではの特別な体験となるでしょう。
| 施設名 | 川湯温泉 冨士屋 |
| 住所 | 〒647-1717 和歌山県田辺市本宮町川湯1452 |
| アクセス | JR紀伊田辺駅から龍神バスにて110分 |
| 日帰り入浴 | なし |
秘湯と合わせて立ち寄りたい和歌山県の観光スポット
紹介した秘湯周辺の観光スポットも紹介するので、より充実した旅になるようにプランを練ってみましょう。
高野山
龍神温泉から車で約1時間の距離にある高野山は、弘法大師空海が開いた真言密教の聖地です。標高約800メートルの山上に広がる宗教都市で、金剛峯寺や壇上伽藍などの重要な寺院群があり、奥之院には空海の御廟が静かに佇んでいます。世界遺産にも登録されており、静寂に包まれた神聖な空間で心身を清められます。
奥之院の参道は、樹齢数百年の杉並木が続く神秘的な雰囲気です。歴史上の名だたる武将や文人の墓石が立ち並びます。宿坊での精進料理体験や写経体験も可能で、日常を離れた特別な時間を過ごせます。朝のお勤めに参加すれば、僧侶の読経の響きに包まれながら、心の奥深くまで浄化される感覚を味わえるでしょう。
熊野古道
湯の峰温泉、川湯温泉の近くには、世界遺産に登録された熊野古道が広がっています。熊野古道は、熊野三山への信仰の道として、多くの巡礼者が歩んだ歴史ある道です。
特に中辺路ルートは、湯の峰温泉から熊野本宮大社へと続き、自然豊かな山道や石畳の道を通じて、古の旅人たちの足跡を感じられるスポットとなっています。道中には、巡礼者たちの休憩地として使われていた、発心門王子や水呑王子などの王子社(参詣道の要所に設けられた神社)が点在しています。
熊野本宮大社は熊野三山の中心的存在で、八咫烏(やたがらす)を神の使いとする神聖な場所です。大斎原(おおゆのはら)の大鳥居は高さ約34mもあり、その壮大さに圧倒されます。
古道歩きの前後に温泉で身を清め疲れを癒すという、古くから続く巡礼スタイルを現代でも体験できるのが、湯の峰温泉、川湯温泉ならではの魅力といえるでしょう。
和歌山の秘湯を楽しむためのヒント
人が立ち入りにくい場所にある以上、秘湯を訪れる際は、入念な計画が必要です。
公共交通機関では難しい場合がある
本記事で紹介した秘湯は、山の奥深い場所にあるため、公共交通機関でのアクセスが困難な場合があります。
アクセス手段が完全にないという訳ではありませんが、バスや電車の本数が限られていたり、最寄りの駅から相当な距離があったりするでしょう。公共交通機関の時間や乗り場を事前に詳細に下調べしておき、レンタカー・自家用車での移動も検討しましょう。
冬季は道路状況に注意する
冬季に秘湯を訪れる場合は、道路状況に十分な注意が必要です。山道では積雪や凍結の可能性があり、チェーンやスタッドレスタイヤの装着が前提となる場合があります。事前に気象情報や道路状況を確認し、安全運転を心がけて秘湯の旅を楽しんでください。
秘湯以外の和歌山の魅力的な温泉や観光スポット
和歌山県には秘湯以外にも多彩な温泉地が点在しています。以下で紹介する温泉は、それぞれ異なる魅力的な泉質と風情を持ちながら、温泉だけでなく周辺の観光も充実しているのが特徴です。
美しい海岸線と温泉が織りなす、和歌山ならではの温泉体験をお楽しみください。また、温泉でゆったりと疲れを癒した後は、近隣の名所や絶景スポットを巡ってみましょう。
1.白浜温泉
白浜温泉は1300年以上の歴史を誇る関西屈指の名湯で、万葉集にも詠まれた由緒ある温泉地です。南紀白浜の美しい海岸線に位置し、リゾート感あふれる温泉街として多くの観光客に愛されています。泉質は含硫黄ナトリウム塩化物泉が中心で、美肌効果や疲労回復に優れた効能があります。
特に「崎の湯」は太平洋の荒波が目の前に迫る絶景の露天風呂として有名で、波の音を聞きながらの入浴は格別な体験となるでしょう。牟婁(むろ)の湯や白良湯など、それぞれ異なる特徴を持つ外湯めぐりも楽しめます。
観光面では、真っ白な砂浜が美しい白良浜海水浴場が有名です。円月島は白浜のシンボルで、特に夕日が島の穴を通る光景は絶景として知られています。千畳敷や三段壁といった奇岩の海岸美も見どころのひとつで、自然の造形美に感動できるでしょう。また、さまざまな動物との触れ合いを楽しめるアドベンチャーワールドは、ファミリーに人気の施設です。
2.勝浦温泉
勝浦温泉は紀伊半島南端の港町にある温泉地で、マグロの水揚げで有名な勝浦漁港と一体となった独特な温泉文化を持っています。海に面した立地を活かした絶景の露天風呂が多く、太平洋の大パノラマを眺めながらの入浴が楽しめます。
泉質はナトリウム塩化物泉で、海の恵みを感じさせるしっとりとした湯質が特徴です。塩分を含んだ温泉は保温効果が高く、湯上がり後も体がポカポカと温まり続けます。
観光面でも勝浦温泉付近は見どころがたっぷりです。勝浦漁港の朝市が名物で、新鮮なマグロをはじめとする海の幸を堪能できます。那智大社と青岸渡寺は熊野古道の終着点として多くの参拝者が訪れ、滝と神社仏閣が織りなす神聖な雰囲気を感じられます。また、串本海中公園では本州最南端のサンゴ礁を観察でき、海中散歩のような体験も可能です。
和歌山の秘湯で自然と歴史を感じてみよう
日本三美人の湯として名高い龍神温泉をはじめ、和歌山の秘湯では、現代でも当時の面影を残す建物や文化に触れられます。古き良き湯治場の雰囲気を残す温泉街を歩けば、まるで時代を遡ったような気分を味わえるでしょう。
また、野生動物との思いがけない出会いや、地元の山の幸を使った料理など、山里ならではの特別な体験も待っています。
忙しい日常から離れ、心身ともにリフレッシュできる「秘湯の旅」に出かけてみませんか?
